あかんたれブルース

継続はチカラかな

『赤んぼう少女』タマミのルージュの伝言

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 これまで観た映画の中で一番怖かったのは『へび少女と白髪魔』でした。
 歳は小学2年生、場所は「南都劇場」で中森明菜の母親が「もぎり」をやっていたはずです。
 地方の二番館なので併映は『妖怪百鬼』とダブルでお得。お目当てはこちらなのですが、
 前座の『へび少女と白髪魔』が終わらないことには目的達成になりません。

 予備知識もなかったので左団扇で臨んだのですが、これがトンだ性悪女か魔性の夏。
 もう、怖くて怖くて観てられない。何回売店に出たことか、そこにはこのポスターが
 張ってあるし、帰ろうにも『妖怪百鬼』は観たいし、ホントに困ったものでした。

 この映画の原作者はあの楳図かずお。もしかすると同名の作品もあるのかもしれませんが。
 多分原作は『のろいの館』(『赤んぼう少女』に改名)だと思うのですが、どうでしょう。
 
 これが、怖い。天才・楳図かずおの最高傑作ではないでしょうか。

 物語は、二人の少女が誕生時の病院で取り違えられたことに端を発します。
 貧しい家で育った主人公がある日、黒塗りのハイヤーでお迎えが来る。あなたは本当は
 この家の子だったと出生の秘密を明かされ、連れていかれたのは大豪邸だったのでした。
 しかし、この家にはもう一人の少女が隠れながら生息していたのです。
 その少女の名「タマミ」ギャーッッッッッ!
 昭和40年代より日本の戸籍から「タマミ」という名前の登録が消えた原因がこれです。

 いや、怖いだけなら他にいくらでもあります。同氏の『へび少女』『へび先生』『へび母さん』(?)
 「エコエコアザラク」の古賀新一原作『のろいの顔がチチチとまた呼ぶ』なんて、もう、、、。

 この『のろいの館』がなぜ名作かといえば、もう一人の主人公「タマミ」の存在です。
 彼女は障害者でもあります。多分現在の社会環境からは「座頭市」同様にこの手の作品は
 世にでないはずですが、読者はこの「タマミ」に深く感情移入して、同情しては、
 怖がるわけですね。

 彼女が三面鏡に向かってルージュを引くその姿。
 「野球ごめんね」といったかどうかは定かではありませんが、涙なくしてはとてもとても。
 そして、嫉妬、金、とそれぞれが幸福を求めてドラマは破滅へと向かいます。

 でもね、主人公が現れてからの「タマミ」って救いようのない不幸な立場に陥ります。
 その母も血縁のないこの不遇な娘を愛している。
 そいて、ラストの「タマミ」の告白。
 これを傑作といわず、何をいう。