中東問題は泥沼化です。広島抗争は波谷守之という人物の奔走で一応の終結を向かえましたが、
イスラム教とユダヤ教には「最後の博徒」ならぬ救世主が現れてくれないようです。
なぜ、こんなにユダヤ人は嫌われるのか?
こと中東問題は大英帝国にその責任はあるとして、
ユダヤ人を知るうえで、村山雅人の『反ユダヤ主義』は勉強になります。
だいたいこの手の本は紀元前のモーゼとか遡って紹介されますが、
この『反ユダヤ主義』は19世紀と20世紀の狭間の世紀末、
ハプスブルグ家のオーストリアを中心に紹介したもの。
ちょっと予備知識として、昔から迫害されるユダヤ人12部族は南北に分かれて対立。
いまのユダヤ人は2部族がルーツで、失われた10部族は日本人のルーツ?
なんていうのは昔の大陸書房とかのトンデモ本とか、、、今でもありますね。
我が家の中公新書・松村剛『ユダヤ人』は初版昭和38年で高校のとき購入。第9版。
によりますと、ヨルダンのケシムの町に300人ほどの不遇者の群、
同じユダヤ人からも迫害され続けたこの十部族の末裔が他と交わることもなく
血族を繰り返した結果だといいます。
ユダヤ人の歴史は迫害の歴史です。彼らに許された職業は卑賤とされた「金貸し」でした。
さて、この本ではヨーロッパ各地で迫害されるユダヤ人は(ゲットーから)
比較的寛容だったオーストリア・ウィーンを目指します。
カトリック教会とハプスブルグ家の力の衰えがその受け入れの理由です。
19世紀から20世紀にかけて自由主義の時代が到来します。それは経済の時代でもあります。
ユダヤ人は教育を重視する民であり、資産を構築した後は文化的な分野を目指します。
学者、芸術家、医者、それ以前であれば銀行家、商人、投資家などですが、教育には熱心です。
それが地主、労働者、農民の反感を買います。旧体制の中の民衆の嫉妬を買います。
ヨーロッパの多くのユダヤ人は同化ユダヤ人と呼ばれました。
彼らはユダヤ教にさほどこだわることはなく、できれば、大多数のキリスト教徒に同化して
受難の旅に終止符を打とうと考えていました。平和と安息を求めたわけです。
しかし、それは許されません。
また、同じユダヤ人でも東方ユダヤ人は彼らとはまったく考えが違えて、
この2部族を祖とするユダヤ人は再び対立を深めます。
この本は世紀末からナチスドイツのユダヤ人虐殺までの経緯と動機が記されたものです。
文章も読みやすく、おすすめです。
なんか「とっても」可哀想なユダヤ人。彼らの受難はさらに続き、今も続きます。