あかんたれブルース

継続はチカラかな

愛には年季が必要?

愛の十字路(27)



 瑚瑠子が藤吾の胸に顔を埋めてつぶやきます。

 「こうしているだけで いいの」

 彼女の髪を右手の中指と人差し指を櫛のように掻きあげると、

 白いうなじに細い後れ毛が露わになります。

 美しい。そして、ほんのりと「4711」のライムの香りがする。

 藤吾はその姿勢を少し前屈みにして、瑚瑠子の上半身を押し上げます。

 そして、唇を彼女に近づけようとした。

 「こうしているだけで いいの」 

 瑚瑠子は同じ言葉を繰り返すと、顔を逸らしてしまいました。

 一瞬、戸惑ってしまう藤吾でしたが、すばやく瑚瑠子の唇を奪ってしまった。

 そして、静かに激情の時を刻む。


 重なり合う肌と肌が離れたとき、藤吾の胸を言いしれようもない空しさが過ぎる。

 のぼりつめた後の冷静な憂鬱は常に藤吾の心を萎えさせてしまう。

 瑚瑠子の背中が藤吾をみつめていた。

 あと幾たび肌を重ねれば、ふたりはひとつになれるのだろうか。

 繰り返される試行と錯誤。

 平行する二本のレールが交あえば、その時点から離れていきそうな錯覚。

 漠然とした安堵と不安。

 このまま、いつまで、試行と錯誤を繰り返して往くのだろうか。

 藤吾はぼんやりと煙草に火を着けた。



   たは(汗)、朝っぱらから三文官能小説でしたな。
   いや、コバルト文庫から拝借してきたような古臭い青春小説でした。

 男と女、男性と女性には性差というものがあります。

 最近はホルモン異常で事情も違ってきたとようですが、本能と感性の相違は存在します。

 若き藤吾君の悩みはこうです。

 彼女を愛してはいる。はずだ。大切にしたい。でも本能が先走ってしまう。
 それに、この間読んだ『ポパイ』の第一特集「女のコを満足させるSEXマニュアル」には
 ここで、こう。これは、こう。そこで、こう。と紹介されていた。
 それとこれとは違うって、冷静に考えれば理解できるのですが、本能は先走ってしまう。

 でも、その場では勝手に飛んでいってしまう。その後に、後悔してしまう。
 まるで飲酒の前と二日酔いの朝ですな。あああ、また、やってしまった。って。
 もっと、彼女に優しく接したい。そういう余裕を持ちたい。今度こそは、、、。
 でも、また本能が先走ってしまう。

 とは別に、女性が接してきた場合に、そうすることが礼儀だと考えてしまう。
 人によりけりでしょうが、彼女の場合は少し違うようでした。
 なのに俺はいつもワンパターン。この若さが憎い。

 要は、彼女を満足させたい。それには肉体だけじゃなくて精神的にも。
 当然、自分もそうです。そこに最高の悦びと満たされる永久が存在する。
 ん、じゃないだろうかと。こんな瞬時で消えるものじゃなくて。
 色々努力がしてみてもなんか違う。心と体ってどうしたら一体になれるの(涙)?

 あ〜あっ、早く大人になりたいなあ。

 そしたら、もっと違った対応もできるのだろうに、、、。
 
  
   おっ、彼女が着替えて髪をとかしています。
   ここで、後ろから優しく肩を抱く。好感度アップって雑誌に書いてあったぞ。
   もう、ボクは冷静です。そそくさ、マメマメ。

   そ〜っと、瑚瑠子の背後に近づきました。

   その時、

   ボガン!

   強烈なカウンターパンチ。鬼の形相、眉間に縦シワ瑚瑠子の鉄槌。



  「ワタシ ノ 後ロニ 立ツンジャ ナイ」




  ・・・ええ? 瑚瑠子? ゴ、ゴルゴ13

 
  藤吾よ、愛のスナイパーの道のりはまだまだ長いぞ。