こころの王国(1)
先週、図書館で偶然みつけた本です。
菊池寛をその愛人と噂された佐藤碧子という秘書を通して、
彼の実像を探っていくといった内容です。
菊池寛を初めて知ったのは中学の時の学園祭で彼の戯曲「父帰る」。
その主役を担任の教師が熱演したのが強く印象に残っています。
私はこの教師と因縁から、あまりいい感情では受け入れられなかった。
上京して、菊池寛が文芸春秋の創業者であることを知ります。
後は、競馬熱中時代にJRAのCMで彼を渥美清が演じ
「どんなに忙しくても競馬場に通っていた」と宣伝していましたっけ。
それには妙に共感を覚えました。
それくらいです。あと数年前に花王・愛の劇場で『真珠夫人』がブレイクしましたね。
だからこの本には驚きと新鮮な感動と、ある不可思議を感じました。
著者が猪瀬直樹っていうのには相当抵抗がありましたけどね(笑)。
今朝、読み終えて、チラッとネットから読者の反応をのぞいてみましたが、
たまたまでしょうか、あまり芳しくない。私は面白かったのですけどね。
猪瀬直樹が足をひっぱっているのは間違いない(汗)。著者なのに(涙)。
それでも私はすごく良かったけどなあ。(猪瀬直樹好かんけど)
これまで以上に、菊池寛に奇妙な親近感を感じてしまう。のでした。
夏目漱石の『こころ』との比較と分析が面白かった。
「ある作品を読んで、うまいうまいと思いながら、心を打たれない。
他の作品を読んで、まずいまずいと思いながら、心を打たれる。
(中略)
ある人は、後者には貴い実感が書いてあるからと云うかもしれない。
他の人は、後者には得難い体験が書いてあるからと云うかもしれない。
が、とにかく後者には、前者の持っていない、
何かの価値があることだけは、首肯するだろうと思う。
私(菊池寛)は、
この後者の持っている価値が何であるかに就いて、
考えたいのである。」
少し、青く、文学論