あかんたれブルース

継続はチカラかな

証の正体

チャーリー・ピッチピッチ・チャップマンの冒険(1)


一八三八年、時計職人だったフィニアスと
「メスメリズムの治療法」という
見世物を見物した。

その治療とは、人間の病の原因は
体内の「動物磁気」の流れの滞りでにあるとして、
手かざしでそれを治療するものた。
この「動物磁気」治療法は磁気睡眠治療法に発展し、
メスメリズムの治療法として
フランスのパリで大流行してるという。

フィニアスはこれにすっかりハマって
時計職人を辞めてメスメリストとなり
治療活動をはじめた。
その治療のなかで、
「病気とは患者自身の心の中の誤った信念によって
 作り出されたものに違いない」という気づきから、
「その病気のもととなった誤った信念を取り除けばいい」
という考えに確信をもつ。

簡単にいえば、病は「気」から
ってことなんだが

これとカルバン主義の反発から
ニューソートという宗教運動になっていった。

ニューソート運動の主張を要約すれば、
(ここは読み飛ばしてもいいよ)
○人間の心情と意識と生命は宇宙と直結している
○すべての病の本質は
 自己意識に対する無知が原因である
○原罪は存在しない
○喜びと成長と発展と幸福の機会が
 すべての人に既に与えられている
○人間は内なる神の一部を顕現すべく
 無限の発展を遂げつつある
○正統的宗教哲学は数百年間過ちを犯し続けてきた
○愛の力とは神の意志であり地上的表現である

今でいニューエイジとか
クリスチャン・サイエンスとかの元祖だが
ポジティブシンキングというやつで
引き寄せの法則もここから生まれた。

もともとキリスト教ってものは
エス自ら布教してたころから証を求められ
それに答えたことから信奉されたものだ。
人々はそれを「奇跡」と呼んだ。

その奇跡は病を治すというのが
もっとも理解されやすいものだった。

アメリカ全土で流行したニューソート
それが大きな要因だっただろう。

わたしの知り合いにマーフィーという青年がいた。
彼も少年時代にニューソートに夢中になっていた。
肉腫症という難病に冒され医者から見離されたが、
ニューソートの潜在意識の力を活用することで
健康を回復させることに成功したことから
熱中は熱狂と確信にかわった。

わたしはニューソートの運動には加わらなかったが
フィニアスから資金援助されシアトルで
キャンディー屋をはじめた。
そこでチュッパチャップスという
学生向けのキャンディーを売り出して成功した。

フィニアスも死に、
わたしも老いていった。
一九三二年、病床のわたしを
マーフィーが一人のロシア人女性を伴って見舞った。
彼女はリッタンド・ニコラエヴナ・ロマノヴァといい
ロマノフ王朝の血筋をひくものだが
ロシア革命で亡命を余儀なくされているという。

彼女からフィトンチッドを凝縮して作ったという
青いキャンディーを与えられた。
わたしはそれを飲むことで健康と若さを取り戻した。

わたしは事業すべてを売却し
彼女とマーフィーと共に
ヨーロッパに向かう。